生理痛がつらい彼女に彼氏ができること|受診の目安も

監修:原野 尚美 医師
この記事の監修医師
原野 尚美 医師
産婦人科専門医
プロフィール →

【監修医師より】

「毎月痛そうな彼女を前にすると、どう声をかけていいか緊張する…」そんなふうに悩んでいませんか? 目に見えない痛みだからこそ、正解を探すよりも「今、どうしてほしい?」と本人に寄り添って耳を傾けてあげる姿勢が、何よりの支えになります。 そして、もし痛みが日常生活に支障をきたすほど強いときは、「我慢しなくていいんだよ」と、婦人科という頼れる場所があることをそっと伝えてあげてくださいね。

目次

この記事でわかること

  • 生理痛は我慢するものではなく、治療の対象になることがある、ということ
  • 痛みの日に彼氏が手伝える、具体的な動き方
  • カイロなど温めるものを渡すときの安全ルール
  • 市販の痛み止めについて、公的資料に書かれている範囲のこと
  • 彼氏が外から気づける「受診を勧めるサイン」と、伝え方の例
  • 治療の選択肢にLEP製剤(月経困難症に使う低用量ピル)があること

 

生理痛で寝込む彼女を前に、何をしたらよいのか分からず、時間だけが過ぎてしまった。そんな経験のある男性は、少なくないかもしれません。この記事は、生理痛がつらい彼女に彼氏ができることを、厚生労働省やこども家庭庁などの公的資料の範囲でまとめたものです。あわせて、外から気づける「受診を勧めるサイン」と、本人の意思を大切にした伝え方も紹介します。痛みの感じ方は人によって違うため、まず本人に聞くことが前提です。

生理痛は「我慢するもの」ではなく、治療の対象になることがあります

生理痛は、我慢し続けなければならないものではありません。厚生労働省のヘルスケアラボも「生理痛を、我慢する必要はありません」と説明しています(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)。

月経困難症とは、生理中の痛みなどで日常生活に支障をきたす状態のことです。治療の対象になります(出典:こども家庭庁、日本女性心身医学会)。原因となる病気がない「機能性」と、子宮内膜症などが背景にある「器質性」があり、どちらなのかは婦人科で調べます。詳しくは月経困難症とは?症状・原因・治療法をご覧ください。

痛みは外から見えず、他の人と比べにくく、客観的に評価することもできません(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)。「みんなあることだから」という比べ方は、本人の痛みを見えなくしてしまいます。

内閣府の調査(令和5年度・20〜60代のネットモニター2万人)から、月経がある又はとまっている女性の回答を見ます。

  • 月経痛で仕事や家事などに「支障がある」:72.9%(「少しは支障はある」を含む合計)
  • 月経に関わる不調への対処で最も多いのは「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」:約35%

 

(出典:内閣府男女共同参画局「令和5年度 男女の健康意識に関する調査」。対処の設問は月経痛に限らず、月経に関わる不調全般を聞いた複数回答です)

報告書は、月経の支障度が高い人でも「病院や診療所に行く」のは1割程度にとどまると述べています。つらさを抱えたまま、医療機関につながっていない人がいるということです。そばにいる彼氏が「婦人科という相談先もあるよ」と伝えることは、大切な一歩になります。

痛みが強い日はいつ? 日にちを決めつけないほうがよい理由

生理痛がつらい日は、人によって、また痛みのタイプによって違います。「今日は何日目だから」と決めつけず、その日の様子を本人に聞くのがいちばん確かです。

機能性月経困難症は、原因となる病気がないタイプです。月経の1日目から2日目ごろ、出血量が多いときに強い症状が出やすいとされます。器質性月経困難症は、子宮筋腫や子宮内膜症などを伴うタイプです。月経の4〜5日前から月経後まで、鈍い痛みが続くことが多いとされています(出典:日本女性心身医学会)。

生理の前後にも痛みが続いているように見えるときは、婦人科に相談するきっかけになります。生理の日数や声のかけ方など、痛み以外の基本は生理のときの気づかいの基本にまとめています。

生理痛がつらい彼女に彼氏ができること|痛みの日の動き方

痛みの日に彼氏ができることは、「本人に聞く」「休める形を整える」「手を動かして引き受ける」の3つが軸です。以下は提案であり、何を望むかは人によって違います。

痛みが強い日は、答えやすい聞き方にする

痛みが強い日は、返事をすること自体がつらい場合もあります。「何かしてほしい?」と広く聞くより、「何か持ってこようか?」「今日は一人で休みたい?」のように、短く答えられる聞き方のほうが、負担になりにくいでしょう。「そっとしておいて」と言われたら、そのとおりにします。「大丈夫?」を何度も聞くと、返事の負担になります。

休める環境を整える

月経時のお腹や腰の保温、十分な睡眠、リラックスできる環境づくりは、対処方法として挙げられています(出典:日本女性心身医学会)。月経痛は睡眠に悪影響を及ぼし、対処は医師に相談するよう案内されています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。彼氏ができるのは、この環境を整える側の動きです。

  • 予定を軽くする、延期する(本人が望むときに)
  • 部屋を静かにして、休みやすい明るさにする
  • すぐに会えない日は、電話やメッセージで「返信はいらないから休んでね」と伝える

 

買い出しや家事は、品物を決める前に聞く

食事の用意、買い物、洗い物、ごみ出し。手を動かして引き受けるだけでも、本人が休める時間は増えます。買い出しに行くときは、「何が要る?」と聞いてからにします。食べたいもの、飲みたいものも本人に聞き、何が痛みに効くかを彼氏が決めて渡すことはしません。温めるものの注意は、次の見出しで紹介します。

体に触れる前に、まず聞く

お腹や腰をさする、マッサージをする、手を当てる。こうした行動が痛みを和らげるかどうかは、公的資料には書かれていません。触れられたくない人もいれば、そばにいてほしい人もいます。触れてよいかは、その都度、本人に聞きます。

痛みの日に避けたい言葉

痛みは他の人と比べにくいため、次のような言葉は本人の痛みを小さく扱うことになります。

  • 「大げさじゃない?」「みんなそうだよ」:痛みの重さを、外から決めてしまう言い方です
  • 「薬、飲めば?」「まだ飲んでないの?」:薬を使うかどうかは、本人が決めます
  • 「病院に行きなよ」を痛みの最中に繰り返す:勧め方は、後半で紹介します

 

温めるものを渡すときの安全ルール

お腹や腰を温めるものを用意するなら、低温やけどを防ぐ使い方も一緒に伝えます。保温は対処方法として挙げられていますが(出典:日本女性心身医学会)、どのくらい楽になるかは人によって違います。

NITE(製品評価技術基盤機構)が挙げる、カイロの注意点は次の3つです(出典:製品安全情報マガジン Vol.468)。

  • 直接肌にあてない:布で巻くなどして、伝わる熱を減らします。使用部位や用途が指定された製品は、指定を守ります
  • 就寝時には使わない:就寝時は熱いことに気づきにくく、長時間、体に接触するおそれがあります
  • 同じ部位に長時間あてない:熱いと感じない温度でも、長時間同じ部位が温められると低温やけどのおそれがあります

 

生理痛がつらい彼女に彼氏ができること|カイロを渡すときの3つの約束(直接肌にあてない・就寝時に使わない・同じ部位に長時間あてない)を示すカード図
図1:カイロを渡すときの3つの約束(出典:NITE 製品安全情報マガジン Vol.468)

痛みで横になったまま、うとうとし始めることもあります。カイロが体に触れたままになっていないか、気にかけるのも彼氏にできる動きです。電気あんかや電気マットでも、就寝時の使用で低温やけどの事故が起きています(出典:NITE)。

市販の痛み止めは、本人が決めるのを支える形で

公的資料に書かれているのは、「使ってよい」「早めのほうが効きやすい」「使いすぎ・効かないときは相談」の3点です。彼氏が薬を選んだり、飲むよう迫ったりせず、本人が決めるのを支える立場をとります。

使ってよい:市販の鎮痛剤を使ってかまわないこと、つらいときは我慢しなくてよいことが説明されています(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)。飲むかどうかは、本人が決めます。

早めのほうが効きやすい:強い痛みを感じてから飲むより、痛みを感じる前や早めに飲むほうが、少ない量でよく効くとされています(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)。日本女性心身医学会も、痛みが強くなってからでは効果が少なく、吐き気があると服薬できないことがある、と説明しています。効き方には個人差があります。

使いすぎに注意:鎮痛剤を過剰に飲むと、胃潰瘍や「薬物乱用性頭痛」を起こすことがあります(出典:日本女性心身医学会)。市販の解熱鎮痛薬の説明書には、5〜6回服用しても症状がよくならない場合は、服用を中止して医師や薬剤師などに相談するよう書かれています(出典:PMDA)。成分によって回数が異なる場合があるため、手元の説明書で確認が必要です。

彼氏にできるのは、「薬は要る?」と聞くところまでです。薬を用意するかどうかも本人に確認し、買いに行くなら、本人が普段使っている薬の名前を聞くか、薬局で薬剤師に相談します。持病や飲んでいる薬があるときも、医師や薬剤師への相談が必要です。薬を飲む回数が増えた、効きにくくなったという変化は、次の見出しの受診のサインにあたります。

彼氏が外から気づける「受診を勧めるサイン」

痛みの強さは外から測れません。受診の目安は「日常生活への支障」と「様子の変化」で見ていきます。複数の公的資料が挙げる目安のうち、彼氏が外から気づきやすいものを整理します。

  • 毎月、予定を変える・寝込む:日常生活に支障が出るほどの痛みは、我慢せず婦人科に相談するよう勧められています(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)。こども家庭庁も、学校や仕事に支障が出る場合を目安に挙げています
  • 痛み止めが増えた・効きにくそう:飲む回数が増えたり、効果をあまり感じられなくなったりしたら、さらなる治療を検討するよう案内されています(出典:こども家庭庁)
  • 年々、痛みが強くなっている:年単位で痛みが強まる場合も、月経困難症の可能性があるため、婦人科への相談が勧められています(出典:厚生労働省 ヘルスケアラボ)
  • 生理以外の時期にも痛そう:こども家庭庁が目安に挙げる項目です。器質性では、病気が進むと月経以外の時期にも痛むことがあります
  • 痛み以外の症状もある:吐き気、頭痛、疲労、脱力感などです(出典:こども家庭庁)

 

生理痛がつらい彼女に彼氏ができること|受診を勧める5つのサイン(予定を変える・痛み止めが増える・年々強くなる・生理以外にも痛む・痛み以外の症状)を並べたチェックリスト図
図2:彼氏が外から気づける、受診を勧めるサイン(出典:こども家庭庁・厚生労働省 ヘルスケアラボ)

このサインは、彼氏が診断するためのものではありません。当てはまる数で決めるものでもなく、「この程度なら受診しなくてよい」という基準も、公的資料にはありません。気になる様子があれば、相談を勧める理由になります。目安の全項目は月経困難症の解説記事にまとめています。

いつもと違う強い痛みが急に出たときは、様子を見すぎずに医療機関へ相談してください。重症例ではまれに緊急の治療が必要になることもあると、厚生労働省のヘルスケアラボに書かれています。

受診の勧め方:心配を伝えて、決めるのは本人に

「病院に行きなよ」と指示する言い方より、心配している気持ちを伝える形が向いています。受診するかどうか、いつ行くかは本人が決めることです。彼氏が急かしたり、連れて行こうとしたりするものではありません。

痛みの最中は、話を聞く余裕がない場合もあります。痛みが落ち着いた日に、静かに話せる時間をつくる形もあります。言い方の例です。

  • 「毎月つらそうで心配。婦人科で相談できるらしいんだけど、どう思う?」
  • 「最近、つらそうな日が増えたように見えて気になってる。無理してない?」
  • 「行くなら、調べるのは手伝うよ。決めるのは君のペースでいいからね」

 

避けたいのは、「病院に行けば大丈夫」と結果を先に決める言い方や、理由を問い詰める聞き方です。「今は行きたくない」と言われたら、その気持ちも受け止めます。迫るより、また話せる関係を保つことが、次の相談への大切な入口になります。

婦人科に行くこと自体にハードルを感じる人もいます。こども家庭庁は、そうした人や、行ったほうがよいか迷う人は、自治体の相談窓口も利用できると案内しています(出典:こども家庭庁)。

付き添うかどうか、どこまで付き添うかは、本人の希望を最優先にします。診察室への同席は、医療機関によって違います。受診の流れや内診への不安は、婦人科の受診の流れで解説しています。

治療の選択肢の一つに、LEP製剤(月経困難症に使う低用量ピル)があります

月経困難症の治療には、鎮痛薬、ホルモン製剤(低用量ピルなど)、漢方などがあります(出典:こども家庭庁)。低用量ピルの一部は、月経困難症の治療薬としてLEP製剤と呼ばれ、医師の処方のもとで保険適用になっています(出典:日本女性心身医学会)。

一方、低用量ピルには血栓症という重大な副作用があります。服用できるかは、医師が問診などで確認します(出典:PMDA「ヤーズ配合錠 電子添文」)。飲むかどうか、どの治療を選ぶかは、本人が医師と相談して決めることです。彼氏が「飲んだら?」と勧めるものではありません。

よくある質問

Q. 生理痛の彼女に、痛み止めを飲むよう言ってもいいですか?

A. 飲むかどうかは本人が決めることなので、指示や催促ではなく、「薬は要る?」と聞く形が向いています。市販の鎮痛剤を使ってかまわないこと、痛みが強くなる前のほうが効きやすいことは、公的資料にも書かれています。飲む回数が増えたり、効きにくくなったりしているときは、婦人科への相談を勧めるサインです。

Q. カイロや温かいものを渡しても大丈夫ですか?

A. お腹や腰の保温は、日本女性心身医学会が対処方法として挙げています。渡すときは、直接肌にあてないこと、就寝時には使わないこと、同じ部位に長時間あてないことを伝えてください。楽になる程度は人によって違います。

Q. 彼女が病院に行きたがらないときは、どうすればいいですか?

A. 急かさず、本人のペースを尊重してください。婦人科はハードルが高いと感じる人には、自治体の相談窓口という道もあります。窓口の一覧は、こども家庭庁の「はじめよう プレコンセプションケア」に載っています。本人のペースを尊重しながら、気になる変化があれば折を見てそっと伝えることが、次の相談の入口になります。

Q. 彼女に低用量ピルの話をしてもいいですか?

A. 治療の選択肢の一つとして、さらっと話題にする程度なら差し支えありません。ただ、「飲んだら?」と勧めたり、理由を詮索したりするのは避けます。低用量ピルは医師の処方が必要で、血栓症という重大な副作用があるため、服用できるかどうかは医師が確認します。なお、性感染症を防ぐ薬ではありません。飲むかどうかは、本人が医師と相談して決めます。

Q. 生理痛は何日目がいちばんつらいのですか?

A. 決まった日はありません。機能性では月経の1日目から2日目ごろに強い症状が出やすいとされます。器質性では、月経の数日前から後まで鈍い痛みが続くことが多いとされています。つらさは人によって違うため、「今日は何日目だから」と決めつけず、その日の様子を本人に聞いてください。

Q. 毎月つらそうなのは、おかしいことですか?

A. 生理中に痛みを感じること自体は、めずらしくありません。ただ、日常生活に支障が出るほどの痛みは月経困難症と呼ばれ、治療の対象になります。毎月つらそう、予定を変えることが多いという様子は、婦人科への相談を勧める理由になります。診断は医師が行うため、彼氏が「大丈夫」「異常」と判断する必要はありません。

Q. 婦人科に付き添ってもいいですか?

A. 本人が望むなら、送り迎えや待合までの付き添いなど、できる範囲で支えられます。まず本人に希望を聞いてください。診察室への同席は医療機関によってルールが違うため、事前の確認が必要です。受診の流れは婦人科の受診の流れにまとめています。

まとめ

痛みの日に彼氏ができることは、本人に聞く、休める形を整える、手を動かして引き受ける、の3つです。温めるものを渡すときは低温やけどに気をつけ、痛み止めは本人が決めるのを支えます。

痛み止めが増える、効きにくい、年々強くなる、生理以外にも痛む。こうした変化に気づいたら、心配を伝えて婦人科への相談を勧めてみてください。受診するかどうかを決めるのは、彼女自身です。

【監修医師より】

婦人科は、「どうしても我慢できないとき」だけ駆け込む場所ではありません。毎月のつらさを少しでも軽くして、自分らしく快適に過ごすための選択肢を、一緒に見つけていく場所です。

もし彼女が不調を打ち明けてくれたときは、まず「話してくれてありがとう」とその勇気を受け止めてあげてください。そして、「無理しなくていいんだよ」と彼女の気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと受診への一歩を後押ししてあげてくださいね。二人で一緒に、心地よい毎日を取り戻していくきっかけになれば幸いです。

参考文献

 

最終更新日:2026-09-30

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